『メダリスト』33話感想

(以下は23/03/25にふせったーに投稿した感想23/03/29にふせったーに投稿した感想の転載(一部修正)です)

美玖ちゃん美玖ちゃん美玖ちゃん……これは切なすぎる…………!!!
 

 
……予想はできなくはなかったんですよ。
あまりに圧倒的な演技の直後、その興奮が未だ冷めやらない空気の中で滑ることがどれほどのプレッシャーになることか。それに呑まれて崩れてしまう残酷な展開、むしろ来ない方が不思議だった。
光ちゃんの直後が子出藤さんだったら……いや、小雀ちゃんや大蜘蛛ちゃん、夕凪ちゃんであっても真っ先にこの展開を予想していたと思います。
 
 
ただ、美玖ちゃんだったから。
 
ブロック大会で光ちゃんに次ぐ点数を叩き出し、強豪クラブのヘッドコーチからも注目される実力者。
クラブでは小さな子たちの面倒見ながら練習し、コーチにも対等に物を言うしっかり者。
スケートリンクの閉鎖のせいでスケートを止めざるを得ず、だからこそ全日本ジュニアに進んで自分達チームが存在した証とするんだという強い想い。
 
そんな、誰が見たって応援したくなるストーリーを背負い、それを実現できるだけの力を持った子だったから。
光の直後の滑走ということで不安はあったものの、それでも本当にそうなるとは思わなかった。というか思いたくなかった。あの空気を跳ね返して良い演技を見せて一部なりとも観客の心を掴む姿を期待してた。
 
 
ああでも。
そんな美玖ちゃんだったからこそ、「光の直後の空気に呑まれて崩れる」展開はもっとも効果的だったんですね。
あの練習回で美玖というキャラの背景を描き、読者に充分に思い入れさせて――――そこからの、「神埼光」という圧倒的な才能の前にその努力も想いも一瞬にして無にされる残酷過ぎる展開!
うん、これ以上効果的な展開無いですよ。ホント、何と巧みなストーリー。
 
他の誰でもなく美玖ちゃんがこの役を背負わされた理由、わかります。わかります……が。
 
 
 
あああああああああ辛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!
 
 
 
最初のルッツが抜けた描写で「あっ……!」って心臓冷えた。
そっちの(光直後で崩れる)展開だったのかと気づいて、そこから先はもう読むのが辛かったです。最後のリカバリー3連コンボ決めたのが救いだけど、TESカウンターでそこまでに減点4、審議1ついてるってことはあの3連以外のジャンプは全部ミスったんだな……。
 
 
キスクラでも現実感なくて呆然としてた美玖ちゃんが、いつものルーティンとは違うとこから初めて全てが終わってしまったことに気づいて涙溢れてくるところ(上手すぎ!)、こちらも思わず泣きました。
本来はもっと滑れる選手がプレッシャー等で崩れて本来の実力からはほど遠い悲しい結果になってしまうのは何度も観てきたけど、いつ観ても辛いです。それをここまで思い入れさせてから容赦なくぶつけてくるのか……つるま先生凄い。凄すぎる。でも酷いようううう。こんなちっちゃくて一所懸命な子たちになんて展開ぶつけるんだ!(いやリアルもそうなんだけど! そうなんだけど!)
 
 
そしてそこにジュナが駆けつけてからの展開がね。もうね。
これで美玖のスケート人生は終わってしまったけど、それでも美玖の人生そのものが終わったわけじゃないんだよね。スケートに打ち込んで積み重ねてきた経験は今後の彼女の人生の中できっと生きる。まだ彼女の人生は始まったばかりなんだから。……もうめちゃくちゃ泣きました。
美玖ちゃん頑張れ。美玖ちゃんは白鳥に変身できなかったあひるの子だったけど、でも白鳥が育てたあひるの子なんだよ。これからの彼女の道に新たな光が降り注いでいますように……。
 
(てか、ライリー! ねぇ! スターフォックスに美玖ちゃんスカウトする気ない? 今ならジュナもついてくるよ!?w)
 
 
  ◆
 
 

●司コーチの過去と「才能」
司コーチの資質は初期から示唆されてたけど、ついにそれがはっきり描かれましたね。そうか、同じアイスダンスの選手から見ても「明浦路司は厳しい条件でも越えていける素晴らしい才能の持ち主」だったんだ。
(考えてみれば、独学で滑ってただけの20歳の子に「アイスダンスなら今からでも選手として育ててあげる」と声がかかったんだもんなぁ。その先生の眼力凄い。いつか登場してほしい)

 
けれど同時に、同じく前から出てた「才能は、あるだけでは意味がない。それを結果に結びつけられて初めて価値を持つ」という考え方が、改めてクローズアップされた回でもありました。
周囲が認めて期待する才能があって、本人の熱意もあって、努力も積み重ねてて――それでも、運とか環境とか覚悟とか勝負強さとか、何かが足りなくてその才能を開花させることができなかった人々は大量にいて、そういう人たちの持っていた才能は最初から無かったのと同じになってしまうのだ、と。
本当に、根性論や綺麗ごとだけでは済まない、もの凄く厳しくて残酷で、でも確かに存在する事実を正面から描いてきてるんだと息を呑んだ回でした。

(同時に、挫折してもその先に新たな輝ける道があるはずという希望の光も同時に描いてるのが優しいんですが。足骨折して選手断念した実叶お姉ちゃんは留学して活き活きしてるし、選手として花開かなかった司やナッチンはコーチとしての道を進みつつあるし、同じくジュナは芸能人として成功してるし)

 

●いのりと美玖の「選択」と「犠牲」
あの新潟での選択は、「いのりちゃんは賭けだけど高得点につながる4回転を選択し」、「美玖ちゃんは3回転までで加点とPCS狙って手堅くやっていく方向を選択した」という、戦略についての選択なんだと思ってました。

けど違ったんだな。
あれは、「自分の求めるものだけを突き詰めて自分で選んだいのり」と「周囲への負荷や気持ちを考えて他者に選択を預けた美玖」の対比だったんだ。
1巻の時から出てきてた「選手自身が自分の意志で選択する」ことの大切さがここで現れてくるとは。

 
そして、「私は(夢を)選んだよ」と呟くいのりの静かな表情が覚悟ガンギマリしててドキッとした。
4回転を選んだ時も。
光に勝つために構成変更を望んだ時も。
……本当に、そこはもう絶対いのりの中ではブレないんだな。ちょっと怖くはあるけど、でも頼もしい主人公。

先月の司コーチの「犠牲を払わせるつもりはない」の時には光は失望したような反応してたけど、いや大丈夫だよ光ちゃん。いのりちゃんは多分君と同じくらい、どんな代償を支払ってでも勝つという修羅の道に足踏み込んできてるよ。

(何となく、光ちゃんは自分の才能が他スケーターを潰してしまうことに自分自身も傷ついていて、潰れずに共に戦える相手を求めているような気がしたです。同じクラブで頑張って追ってくる夕凪に声かけた時の嬉しそうな表情とか、美玖が崩れた時のちょっと悲しげな表情とか……。解釈間違えてるかもですが)

 

●美豹ちゃん(&愛花ちゃん)
美豹ちゃんここで来たか!
7巻の各ブロック大会表彰台に美豹ちゃんぽい子がいるのに気づいた時から、こっそり彼女の再登場を楽しみにしてました。彼女も光ちゃんに呑まれて崩れてしまったクチっぽいけど、来年もここに来てみせますんで、と心折れてないのが嬉しい。頑張れ美豹ちゃん。

てか美豹ちゃん、いのりと同じ1級大会に出てたのに今年全日本ノービスにいるって、これいのりと同レベルの成長スピードではないですか。1級大会の時もいのりのスケーティングの上手さをちゃんと見てたもんなぁ。岡山ティナFSCの期待株だよねきっと。星羅ちゃんは今何級だろう。イケおじ梟木コーチも再登場してて嬉しかった~。

 
後、第3Gの練習コマの真ん中にいるツインテちゃん、これブロック大会で一緒だった炉場愛花ちゃんでは? ううう、彼女も残酷な洗礼受けてしまうのかしら……。

 

●いるかさん以外のジュニア勢、「運も味方にできる」
ついに出てきたいるかさん以外のジュニアメンバー
(この人たちが出てきたということは全日本ジュニア編はあるんだな、とメタ読みしちゃったけどどうだろう)

 
すずちゃんと同じクラブの子……もしかして?と確認したら、やっぱりー! 「JAPANジャージを小学校に着てって見せびらかした」子じゃないですか!w この子とすずちゃんが揃うとめっちゃ賑やかそうだな蓮華茶SFC。

唯美主義っぽい黒髪さん、さばけた口調の銀髪お姉さん、個性強そうなメンバーだなぁと思ってたら、ラストで彼女たちが演技構成変更の是非について語り合ってて、おお!
黒髪さんと銀髪さんは非だったけど、いるかさんは是なのね。まさにその選択をいのりが選んだわけですが、それを見たいるかさんの反応が超楽しみ。いのりは「運も味方にできる本当の天才」になれるのかどうか、次回が待ち遠しい……

 

●次号番外編!
と思ったら、次号は番外編かーーー!!w
まぁコミックス作業もあるものね。仕方ないね。だが、ああ、この続きが2ヶ月後だと思うと辛いなぁぁぁ!!

いやでも最近はめちゃくちゃお忙しくなってそうだし、どうかお身体気をつけてくださいませ>つるま先生
来月の番外編と、その次からの本編の続きを楽しみにしております。